陰鬱

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ネットの海で愛を叫ぶ

人が対人関係や人生の生き方,社会不適合性に悩み苦しみ、精神を病んでしまうとき、その人には適切なソーシャルサポートが必要不可欠である。

ソーシャルサポートには大まかに分けて、

・情緒的サポート...その人の情動や感情の安定をサポートする。

・道具的サポート...物やサービスを提供する。

・情報的サポート...その人の悩みや問題の解決に導きだせるような情報やアドバイスを提供する。

この三つが挙げられるが、どれも他者の存在があってこそ、十分なサポートを得ることができる。

このサポートは、ストレスや苦悩により発症した精神疾患を改善するのにも役立つし、なによりも予め精神疾患になるリスクを軽減して予防することにも一役買う。

道具的サポートや情報的サポートは、問題焦点型コーピングとして、より実践的なものに思えるが、情緒的サポートも軽んじられるべきではない。むしろ、情緒的サポートに力を入れることを忘れてはならない。

「ストレス素因モデル」を参照すると、ストレスと元々の脆弱性精神疾患に罹りやすい素質)が、精神疾患に繋がるとしている。

ストレスにはコーピング(ストレスに適切に対処すること)が欠かせず、コーピングには情緒焦点型コーピングも必要だ。

ストレスから対処するために、適切なアドバイスをすることも大事だが、なによりも、励ましてくれたり、愛で悩める人を包んであげたり、肯定してあげることも大事だ。

情緒的サポートには愛が必要だ。カウンセラーや精神科や電話相談では、愛を貰うことはできない。どうしても業務上クライエント(患者)とセラピスト(カウンセラー,医者)の関係で止まってしまうからだ。そのことで、自分の悩みをほんとに分かってくれているのか、その人は疑問に思う。

この情緒的サポートを求めて、人々は自分を受け入れてくれる、自分に愛をくれる人を探す。家族や周囲の環境に恵まれない彼らは、インターネットという名の電子の海で愛を叫ぶ。苦悩の根本には孤独感があるからだ。

ダビデの星の元に生まれた、哀れなユダヤ人の如く、彼らは現実から追いやられ、電子の海を漂流する。釣り合いの原理のように、メンタルの弱い人間は、弱い人間同士で特定のコミュニティに落ち着く。しかし、そこではせいぜい傷の舐め合いしかできないことが多い。なぜなら、自分のみならず相手にも問題があることが多く、お互い破滅しやすいからだ。

決してインターネットで孤独を癒し、愛を求めることは悪いことではないと思う。しかし、インターネットには心無い人間もいるし、お互いを傷つけ合い、その(インターネットというバーチャルの世界で)経験を現実と錯覚し、より現実を恐れてしまうこともあるだろう。

だから、国はエンカウンターグループのように、悩める人が積極的に交流できるような機会や居場所を設けるべきなのである。それを代理して行っているのが各NPO法人である。

愛という側面を強調すべきではないと思うが、やはり情緒的サポートという精神衛生上大きな意義を持つ支援を得るためには、やはり愛が必要なのであり、ネットではなく本来的に現実で愛を見つけられるように国が努力すべきなのである。

国からも、現実からも、両親からも疎まれた哀れな流浪の民(私を含め)は、今もネットの海を漂流し、阿鼻叫喚の愛を叫ぶ。  2020/3/3