神格化

彼が亡くなって、僕は彼を神格化しているのだろう。確かに今思えば、彼にも至らない点があったし、過度な自尊心で僕の意見とか言動を否定されたこともあったのを思い出す。カウンセラーという職業を馬鹿にされ、やっぱり職業差別的な感情は、だれしも無意識ながら存在するものだと嘆き、自分の主張を正当化した。それでも、死んでしまわれると、そういった負の記憶は薄れていって、彼の生前の良き情報のみが想起されていく。死後もその人の悪い部分に注目していたら、バチが当たりそうだからだ。そして、もはや彼は生きていないから、彼の欠点の情報は増えることはなく、良きエピソードのみが残って、彼は神格化された。

ただ、本当にいい奴ではあった。小中高と馬鹿にされ続けてきた僕にとって、彼は優しい人間にうつった。決して暴言なんて吐かなかった、ふざけても吐かなかった。簡単に「しね」だとか言う人がいる。そういう人を許さないタイプだった。僕も悪口を言われ続けて、いじめられて生きてきた人間だけど、どこか歪んでしまって、自分でもそういう汚い言葉を罪悪感なく無意識に使うようになってしまった。でも、彼は最後まで純真で、そんな言葉は使わなかった。聞いたこともなかった。

これもまた事実でありながら、神格化だろう。もはや、彼の欠点を振り返る義理はないように思える。