陰鬱

考えたこと,感じたこと,思ったことを書く。https://schizzoid.web.fc2.com

死後の尊厳について、僕は未だかつて大して考えてこなかった。結局は死んだらおしまいといったような、誰にでも共通して持つ漠然とした考えに支配されていた。彼の死後、僕は彼の実像を歪め、理想像という名の虚像を作り上げた。そして、君は僕が至極当たり前のように行ったその歪曲に、違和感を覚えた。そして、僕も自分の誤った考えに気づいた。

彼の様々な実像、1年間接してきて感じた様々な彼の側面を、僕は知っているつもりである。そして、彼の良い部分は勿論、悪い部分も知っている。僕は、彼が亡くなったことで、その良い部分ばかりを取捨選択し、悪い部分から目を背けた。そして、彼がさも聖人かの如く、理想像を作り上げ、そして神格化とも捉えられるほど、理想化した。

それは、人の死に対する畏敬の念と、死してなお悪い部分に注目していたら、なにか決まりが悪いというか、バチが当たるというか、そういった応報思想に支配され、僕は彼を理想化した。

良い部分にだけ注目すれば、きっと彼も満足するだろうといったような、親切心からしていた、はずだった。

でも、よく考えれば、自分が罰せられるのではないか、彼を良い人間に仕立て上げればいいのではないか、といったような自己中心的な利己心から、あんなことをしたのではないかと思う。

厳しい言い方をすれば、僕は彼の人間としての尊厳や、人間性を否定したのも同然だった。あんなに陰で君に愚痴を零し、彼に対して不満を感じていたというのに、僕は彼を聖人の如く書き連ね、彼という人間を歪めた。死後、人の顔に落書きをするような、死体蹴りをするような、そんな非情な行為となんら変わらないことを、僕はしてしまったのではないか。そんな僕に君が違和感や嫌悪感を覚えるのは当然だと思う。ただ、彼のありのままの姿を注視し、僕はただ彼の死後も、ありのままを認めてあげればよかった。そして、下らぬ悪口とも取れる愚痴を零した自分の愚かさを、僕はしかと受け止めなければならない。

君が僕の誤った言動に対して指摘してくれたお陰で、僕はまた自分の過ちに気付いた。僕は彼の尊厳たるものを汚辱していた。名誉毀損というものだろう。さらに、僕は彼に対して少しでも愚痴を零してしまったことに後悔していた。それから目を背けるためにも、僕はあんなことを書いて、自分の罪を帳消ししようと考えたのかもしれない。僕はまた言われなければ気がつかなかった。僕は間違っていた。君に言われて初めてわかることがある。気付かせてくれて本当にありがとう。ここ数日、僕はそんなことをずっと考えていた。



君はきっとまもるくんに対して、ふとしたときに考えてしまうだろう。同じ悩み苦しむ境遇を重ね、彼が旅立つその時までの心境を深く考えてしまうと思う。彼のことを思ってくれる人がいるだけで、彼は嬉しいだろう。生前、僕は一回だけ彼との通話の中で、君のことを話題にしたことがあるが、彼は君のことを好意的に思っていた。素っ気ない態度はとっていたかもしれないけど。

しかし、彼は君にとって死のメタファーになってしまった。僕は君まで居なくなられては、もう壊れてしまう。君だって当然ながら生きたいはずだ。だから、僕はこのブログの文章を以て、彼のことを書くのも話題にするのも最後にする。僕の中でも君の中でも、彼は永遠に生き続けることは承知の上である。決して忘れて欲しいと言っているのではない。ただ、僕はここで彼と一区切りをつけたいと思う。どうか、許して欲してください。

だから、最後に彼との関わりについてまた後日書こうと思う。それを以て、僕は沈黙する。

本当にバカだった。僕はダメな人間だと思う。自分の過ちや歪んだ考えに対して言われなきゃ気付けなくて、それなのに君に対して反抗して、受け入れようとしなかった。なんか自分という人間が嫌でたまらなくて、つらい。ごめんね、本当にいろいろ傷つけちゃった。ごめんなさい。