清掃のおばさん

僕がバイトを初めて最初にトイレ掃除のいろはを教えてくれた鶴岡さんというおばさんが、なにがあったのか急に辞めてしまった。

ショッピングモールのオープン当初から働いていたので、約10年以上同じ場所で働いていたのだ。完全に清掃のことも施設のことも知り尽くしていたベテランであった。

僕にも親切に掃除の方法を教えてくれた。一度も怒ったりしなかった。75歳になっても平然と数多の便器を掃除していく姿は、なにか神々しいものを感じた。あれほど快活な人が、何故なのか。最後に菓子折でも差し上げたかったのに、なにもお礼も言えず、去ってしまった。

僕は所詮下っ端の人間であり、コミュ障なので詳しい事情を聞けなかったが、体調を崩したというよりは、上の会社と揉めたような感じがする。

最近色々な人が辞めていく。人手不足なのだろう、僕は日曜の午前と午後も出勤しなければならなくなり、これからは相当忙しくなるだろう。

バイト先も派遣先もそうだが、どこも親切な人ばかりだ。怒られたことがない。なんでだろう。やはり、お年寄りの方は温厚なのだろうか。派遣先のおじさん連中も気さくな人が多く、たまに話しかけてくれる。よくバイトで嫌な思いをしたり、怒鳴られたりすると聞くが、僕は未だに実感がない。環境に恵まれているからだろうか。もちろん、感じの悪い人はいるけれど。そういった親切な人々のおかげで、僕の精神は安定しているのだろう。職場でもストレスフルな体験をしていたら、僕はもう壊れてしまうだろう。

派遣先で知り合った人の話によると、派遣で一番地獄なのはイベントの設営らしい。怒鳴られ人格破綻されのオンパレード。一度体験してみたいが、怖くて行く気はしない。