3
僕はネット上でも孤立しやすく、ネット友達というものも殆どいない。そもそも、僕に興味を持ってくれる人が少なく、また、SNS上でのコミュニケーションたるものがよく分からない。現に、mhtbで友達募集しても、誰も返してくれる人は居なかった。
彼はネット上で人を募集する人が上手かった。もちろん、どれほど親しくなれるかは未知数だが、取り敢えず話す人は何人か作れていたようである。mhtbの募集文にも工夫があって、こう書けば人は集まるとか僕に偉そうに語っていたこともある。
Mhtbやジモティー,@メンタルヘルスだとかTwitterだとか色々な場所で人を募集した。しかし、人が集まっても実際に千葉市の公民館まで来て、活動をしてくれる人なんてそうそういなかった。しかし、それでも初回集まってくれたのは、男性二人。2019年6月29日のことだ。
一人は三十代の男性。IT関連について詳しく、また話も面白い、ノリがいい。良識人。一見普通に見える兄ちゃんという感じだが、パニック障害を患っているようだった。いつの日か電車に乗るときに、彼だけは徒歩を選んだ。パニック発作を避けるためだ。
もう一人は、僕よりも身長が低い二十代の小太りな人。モンスターズインクのマイクのTシャツを着て、いつも汗っかきである。元シェルターにいたらしい。アニメや漫画などのサブカルチャーの知識量は半端ではなく、オタク特有の知識のひけらかしに、俺は頷くしかなかった。
この二人が千葉駅の緑の窓口の前に集合する。俺はめちゃ緊張していた。特に、年上にまだ抵抗があったあの頃だから、年齢を聞いた途端僕は臆してしまったのである。彼も非常に緊張はしていただろうが、あの頃の彼の勇気と行動力が、それを上回った。きちんと挨拶して、冷静に公民館への道を案内する。
この二人、公民館へ向かう道で、既に打ち解けあってアニメの話に花を咲かしている。おいおい、これが本当に引きこもりがちな人間なのか?!
そう、これ以降の活動でも分かることだが、実際にこういう自助会はオフ会に来るような人間は、総じて社会的スキルが少なからずある。本当に引きこもっている人間は、来ないのだ。ある程度のコミュニケーション能力と自尊心と行動力があるからこそ、実際に外に出てこんな活動に参加できるのだ。そう考えると、我々の活動はサードスペース的な場を提供するのが目的であって、真に引きこもりや不登校の人間を支援することは、できなかったのである。
公民館の和室の部屋を借りて、先にも述べたようなレクリエーションゲームをやる。どれも大の大人がやるには少し恥ずかしいというか、簡易なものばかりであったが、二人ともすんなり参加してくれた。パプリカのBGMを流しながら、リズムゲーム的なことをしたり、狭っ苦しい和室の中で、4人で名前を呼びながら鬼ごっこをするという奇祭が行われた。これらのゲームには彼なりの意味づけがあった。お互い打ち解けあうためのウォーミングアップ的な目的だったり、自己主張的(アサーション的な?)能力やコミュニケーション能力の向上など...対人スキルを身につけるために、そういったレクリエーションゲームを用いたのである。
しかし、ゲームもネタ切れするので、あとはお菓子を食べながらお互いの自己紹介や近況を話し合った。そして、夕方くらいには解散。この二人はノリが良く、今後の活動にも来てくれるわけだが、小太りの人と彼は今後揉めることになる。そして、初めての挫折と決別を経験することになる。